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3 種類の会計ルール

会計基準には以下の 3 つがあり、国や企業によって使い分けられています。

  • 日本基準 (JGAAP) … 日本独自の基準。純利益(収益-費用)を重視する。
  • 米国基準 (USGAAP) … アメリカ独自の基準。IFRS に近い。
  • 国際基準 (IFRS) … 統一を目的とした基準。純資産(資産-負債)を重視する。 特別利益/損失の項目がなく、多くを営業損益の形で計上する。

日本では企業ごとに選択できるため、決算短信の表題などを見て、どの会計ルールが使われているのかを判断する必要があります。

IFRS の基本

  • ロンドンの IASB(国際会計基準審議会) が策定した会計基準。世界共通の会計基準を目指して策定された。
  • IFRS は International Financial Reporting Standards の略。
  • 読み方は「アイファース」あるいは「イファース」が一般的。
  • 地域・国別の事情
    • 欧州連合 (EU) … 2005 年に上場企業に IFRS の適用が義務付けられた。
    • アメリカ … 認められていないが、米国基準はもともと IFRS に近い。
    • 日本 … 企業ごとに自由に採用できる。海外事業を拡大する企業を中心に導入が進んでいる。

IFRS は事業の継続性を重視しており、非継続とみなされた事業は決算から除外します。 日本基準とは異なり、原則だけを決めて、多くを経営者や企業の判断に委ねます。 「実質優先志向」の考え方に基づき、形式的な数値よりも、実態を反映することを求めています。

日本基準と IFRS の違い

日本基準IFRS
リストラ費用特別損失営業費用
海外事業での損失特別損失営業費用(事業再編に伴う損失を含める)
正ののれん定期償却償却なし(非償却)
負ののれん特別利益営業利益
研究開発費費用に計上一部の計上を免除

リストラ費用

例えば、リストラを実施すると、リストラ費用の計上方法の違いにより、営業黒字になったり営業赤字になったりします。 日本基準ではリストラ費用は特別損失に計上されるため、営業利益に影響しませんが、IFRS では営業費用に計上されます。

のれん代

よく話題に上るのは、M&A(合併・買収)で発生した正ののれんと、負ののれんの処理方法の違いです。

正ののれん

ブランド価値などを考慮して割高に M&A を行うと、正ののれんが発生します。 日本基準では(正の)のれんは 20 年以内の定期償却で、毎年費用として計上していきます(実際には、5 年程度で償却されるケースが多いようです)。 少しずつ価値が下がると考え、費用が発生したとみなすため、毎年の営業利益が減って見えます。

一方、IFRS では(正の)のれんを償却しないので、M&A を行ったら、その年だけで費用計上は完結です。 貸借対照表に買収時ののれん代がずっと計上されたままとなります。 米国基準でも正ののれんの償却処理はありません。 IFRS や米国基準では、買収した時の価値がずっと続くと考えるわけですね。 もちろん、企業価値が低下したとみなされた場合は減損処理を行うことになり、そのタイミングで大きな 営業損失 として計上されます(毎年、減損テストを行います)。 日本基準でも必要な場合には減損処理を行いますが、特別損失 として計上します。

ベンチャー企業の買収は、正ののれん代が大きくなる傾向がありますが、IFRS であれば償却による毎年の利益減少がなくなるため、日本基準よりも積極的に M&A を行いやすいと言えます。 日本の企業がベンチャー企業の買収に消極的なのはこのあたりに原因がありそうです。

負ののれん

毎年赤字を出しているような企業を割安で買収した場合は、「負ののれん」が発生し、利益として計上されます。 日本基準では負ののれんは特別利益 として処理されますが、 IFRS では負ののれんは営業利益 として処理されます。 IFRS では、割安な M&A を繰り返すと、見せかけの営業利益がどんどん増えてきます。

固定資産の減価償却費

  • 日本基準 … 定率法が一般的。そのため、設備投資の直後は償却費用が大きくなる。
  • IFRS … 定額法にするケースが多い。初期費用が少なくて済む。

研究・開発費

  • 日本基準 … 費用に計上します。
  • IFRS … 資産として計上し、製品発売後に費用にします。自動車メーカーなどでは初期費用が少なくて済みます。

家電量販店のポイント値引き

  • 日本基準 … 販売管理費として計上。
  • IFRS … 値引きとみなし、売上高から差し引く。

代理販売

代理販売では、売れ残りを販売元に返品することができる販売形態です。

  • 日本基準 … 売上げに計上。
  • IFRS … 販売元から受け取る手数料のみが売上げとなる。

代理販売の多い百貨店などが、日本基準から IFRS に乗り換えると、売上高が大幅にダウンします。

たばこ税

  • 日本基準 … 売上げに計上。
  • IFRS … 販売店が代理で回収しているだけとみなされ、売上高に含めることができない。

日本たばこ産業 (JT) が2012年3月期に IFRS に乗り換えたため、売上高が3分の1に減少しました。

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