住宅資金の準備
住宅の購入には多額の資金が必要となるため、住宅ローンを利用するのが一般的です。 ただし、金融機関などからの借り入れの限度額は、不動産価格の 8 割程度なので、残りは自己資金として準備する必要があります。 自己資金を貯めるときは、財形住宅貯蓄の制度や、贈与の特例などを利用すると非課税枠によって有利に資金を用意することができます。 住宅ローンを使用した場合も、**住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)**を受けることができ、日本では住宅の購入に関して、税金面で優遇されています。
- 自分で貯める: 財形住宅貯蓄
- 住宅ローン: 財形住宅融資、フラット 35、民間住宅ローン
- 親からの援助: 住宅資金に関する贈与の特例
財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)
財形住宅貯蓄は、3 種類ある財形貯蓄の中のひとつで、勤務先が金融機関と提携してこの制度を提供している場合に利用することができます。 貯蓄は給与天引で行われるため、計画的に資金を準備することができます。 3 種類の財形貯蓄の中で、財形住宅貯蓄に関しては、用途が住宅資金に限定される代わりに、550 万円までの元利合計分まで非課税になるといった、税金面での優遇措置があります。 550 万円を超えると、この非課税枠が使えなくなり、利子所得による 20% の源泉徴収が課せられるので注意してください。
参考: 財形貯蓄制度|厚生労働省
- 財形住宅貯蓄の特徴
- 用途の制限: 住宅の購入、増改築
- 年齢の制限: 申し込み時に 55 歳未満
- 積立期間: 5 年以上の積立が必要(ただし、住宅購入のためであれば 5 年未満での引き出しも可能)
- 税の優遇: 元金と利子の合計 550 万円までが非課税(財形年金との合計額)
また、財形貯蓄の残高が 50 万円以上あれば、後述の財形住宅融資を受けられるというメリットもあります。
住宅ローン
住宅ローンには、独立行政法人である住宅金融支援機構などが行う公的ローンと、民間の銀行などが行う民間ローンがあります。
住宅ローンの種類 | 窓口 |
---|---|
財形住宅融資 | 住宅金融支援機構 |
フラット 35 | 民間金融機関(住宅金融支援機構が住宅ローン債権を買取) |
民間ローン | 民間金融機関 |
住宅ローンの返済額は、給与収入の 25% 程度が目安だと言われていますが、余裕がある場合は繰上げ返済を行うことで、総返済額を減らすことができます。
- 繰上げ返済
- 期間短縮型: 返済期間を短縮(残りの毎月返済額は変わらない)。効果大
- 返済額軽減型: 毎月の返済額を減らす(返済期間は変わらない)。効果小
住宅ローンの返済方法には大きく 2 種類あります。
- 返済方法
- 元利均等返済: 毎回一定額を返済する(元金+利息の合計額が一定ということ)。最初は元金の返済割合が低いため、総返済額は多くなってしまう。
- 元金均等返済: 毎回一定の元金を返済する(元金+利息の合計額は一定ではない)。当初は返済額が多くなるため、多くの資金が必要となるが、総返済額は少なくなる。
金利は大きく分けて 3 種類のパターンがあります。
- 金利
- 固定金利: 申し込み時、あるいは融資時の金利が、完済するまで固定。
- 変動金利: 適用金利が半年ごとに変化する。ただし、毎月の返済額は 5 年ごとにしか見直されない(金利自体は半年ごとに変化するので、元金と利息の支払い比率は変化している)。5 年経過時に返済額が急上昇した場合でも、直近の返済額の 1.25 倍までしか上がらないという上限が設定されている。
- 固定金利選択型: 一定期間は固定金利で、その後は固定金利か変動金利かを選択する。固定金利の期間を長くすると、金利は高くなる。
財形住宅融資
勤務先を通して、一定の財形貯蓄を行っていると、住宅金融支援機構による公的ローンである財形住宅融資を受けることができます。 公的な融資のため、保証人や保証料は必要ありませんが、特約火災保険などへの加入が条件になっています。
- 財形住宅融資の特徴
- 融資の条件: 3 種類の財形貯蓄のいずれかの残高が 50 万円以上で、1 年以上継続した積立があること
- 融資限度額: 最高 4000 万円/物件価格の 90% 以内/財形貯蓄残高の 10 倍以内
- 金利: 固定金利(5 年ごとに金利見直し)
- 返済期間: 35 年以内(80 歳以下で完済すること)
財形住宅融資は、フラット 35 と併用することが可能です。
フラット 35
フラット 35 は、民間金融機関が窓口となって提供しているローンですが、背後では住宅金融支援機構が住宅ローン債権を買い取り、証券化などによって運用を行っています。 そういった意味で、公的な側面を持った民間ローンといえます。 財形住宅融資と同様、保証人や保証料は必要ありません。特約火災保険などへの加入が必要になるのも同様です。
- フラット 35 の特徴
- 融資の条件: 申し込み時点で 70 歳未満/本人の居住用/物件価格が 1 億円以内
- 融資限度額: 最高 8000 万円/物件価格の 100% 以内(ただし融資割合が 90% を超えると金利が上がる)
- 金利: 固定金利(フラットという名称のもと)あるいは段階金利。具体的な金利は窓口となる民間金融機関が決め、融資実施日の金利が適用される
- 返済期間: 15 年〜 35 年(80 歳以下で完済すること)
繰上げ返済の手数料は無料で、窓口では 100 万円単位、インターネットでは 10 万円単位で可能です。 フラット 35 は、財形住宅融資と併用することができます。 フラット 35 は、借り換えにも利用できるようになっています。 現状使用している住宅ローンについて、金利面で不満がある場合は、フラット 35 への借り換えを検討してみるのもよいでしょう。
民間ローン
民間の金融機関が提供している民間ローンは、公的ローンに比べて物件に対する制約は少ないのですが、申込者の収入などがより細かくチェックされます。 また、万が一の場合に備えて、団体信用生命保険への加入が必須となっています(公的ローンの場合は任意加入)。 団体信用生命保険の保険料は、金利に含まれているのが一般的です。
親からの援助
贈与時の非課税措置
贈与を受ける人の所得が 2000 万円以下であれば、父母や祖父母から受ける贈与の一定額が非課税となります(H31.6.30まで)。 非課税限度額は年によって異なり、贈与税の 110 万円の基礎控除とは別枠で非課税となります。
相続時の非課税措置
父母や祖父母が 60 歳以上で亡くなった場合、相続人となる子や孫が 20 歳以上であれば、累計 2,500 万円までの贈与が非課税となります。 平成 31 年 6 月 30 日までは、住宅資金としての贈与であれば、親の年齢制限がありません。