日々公表銘柄とは
日本取引所グループ (JPX) により、ある銘柄が日々公表銘柄に指定されると、信用取引の残高情報が毎日公表されるようになります。 下記は、日本取引所グループ (JPX) の日々公表銘柄の定義です。
「日々公表銘柄」は、信用取引残高の公表を日々行うことにより投資者に信用取引の利用に関して注意を促すためのものであり、信用取引に関する規制措置を実施している銘柄ではありません。
決算発表で業績の見通しが大きく変化した場合や、重大な IR の公表により、信用取引が活発になると、いわゆる「祭」状態になります。 このような状況では株価の変動が激しくなり、売買のリスクが高くなるため、日本取引所グループ (JPX) は信用取引の状況を監視し、過熱状態に入りそうだと判断したときにその銘柄を「日々公表銘柄」に指定します。
「祭」状態になっている銘柄は価格の変動を見れば普通はわかるのですが、JPX が正式に、「おい、おまいら、ちょっと落ち着いて売買しなよ」 と言ってくれているわけですね。 信用取引がさらに過熱状態になり、価格変動が激しくなると、JPX は**規制措置(委託保証金率の引上げ措置)**の実施を行います。規制措置としては、制度信用取引における委託保証金が通常30%のところを、50%に引き上げる(うち現金20%)といったことが行われます。
日々公表銘柄の情報
日々公表銘柄に指定された銘柄の一覧は、日本取引所グループ (JPX) の下記のページで調べることができます。
規制措置を行われている銘柄とその内容の一覧は、下記のページで参照することができます。
個々の銘柄の信用取引残高は、下記のページで参照することができます。
日々公表銘柄の指定のガイドライン
どのような場合にその銘柄が日々公表銘柄に指定されるかのガイドラインは、下記に説明されています。
- 口座設定約諾書等 | 日本取引所グループ
- 「日々公表銘柄」の指定等に関するガイドライン
- 信用取引に係る委託保証金の率の引上げ措置等に関するガイドライン
下記は 平成29年2月1日 時点での「日々公表銘柄」の指定に関するガイドラインの抜粋です。
日々公表銘柄指定の基準(下記 1~4 のいずれかに該当する場合)
- 残高基準 次のいずれかに該当する場合
- イ.売残高の対上場株式数比率が10%以上で、かつ、売残高の対買残高比率が 60%以上である場合
- ロ.買残高の対上場株式数比率が20%以上である場合
- 信用取引売買比率基準 3営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との 乖離が30%以上であり、かつ、次のいずれかに該当する場合(各営業日の売買高が 1,000売買単位以上である場合に限る。)
- イ.3営業日連続して信用取引の新規売付比率が20%以上である場合(各営業日 の株価が各営業日時点における25日移動平均株価未満である場合に限る。)
- ロ.3営業日連続して信用取引の新規買付比率が40%以上である場合(各営業日 の株価が各営業日時点における25日移動平均株価を超過している場合に限る。)
- 売買回転率基準 1営業日の株価と当該営業日時点における25日移動平均株価との乖離が40%以 上であり、かつ、次のいずれかに該当する場合
- イ.当該営業日の売買高が上場株式数以上であり、かつ、当該営業日の信用取引の 新規売付比率が30%以上である場合(当該営業日の株価が当該営業日時点にお ける25日移動平均株価未満である場合に限る。)
- ロ.当該営業日の売買高が上場株式数以上であり、かつ、当該営業日の信用取引の 新規買付比率が60%以上である場合(当該営業日の株価が当該営業日時点にお ける25日移動平均株価を超過している場合に限る。)
- 特例基準 1~3の基準のいずれにも該当しない場合において、当取引所が信用取引の利 用状況や銘柄の特性を考慮し必要と判断した場合
簡単に言うと、発行株式数に対して信用取引があまりにも多く、極端に買いまたは売りに傾いている場合が対象になるということでしょう。
日々公表銘柄解除の基準(下記 1~4 のすべてに該当する場合)
解除の条件は、下記のすべてに該当する場合ということに注意してください(指定の条件はいずれかに該当です)。
- 残高基準 次のイ及びロのすべてに該当した場合
- イ.5営業日連続して売残高の対上場株式数比率が8%未満である場合
- ロ.5営業日連続して買残高の対上場株式数比率が16%未満である場合
- 株価基準 5営業日連続して各営業日の株価と各営業日時点における25日移動平均株価との 乖離が15%未満である場合
- 特例基準 1及び2の基準のすべてに該当している場合であっても、当取引所が信用取引 の利用状況や銘柄の特性を考慮し必要と判断した期間は、指定を解除しないことができ る。
指定の基準や、指定解除の基準に「特例基準」がありますので、結局のところ具体的にどのようなケースで日々公表銘柄に指定されるかは、JPX の判断次第ということですね。
さらに信用取引が過熱状態になり、ボラティリティが上昇した場合に実施される規制措置(委託保証金の率の引上げ措置)のガイドラインは、抜粋するには長すぎるので本家のドキュメントを参照してみてください。 規制措置は、その加熱度合いにより、第一次措置、第二次措置、第三次措置、第四次措置、というように実施されていきます。 基本的な判断手法は「日々公表銘柄の指定」と同じで、違いは、基準とする閾値が大きな値になっているというところです。
日々公表銘柄の投資戦略
日々公表銘柄に指定されると、信用取引残高を毎日確認できるようになるため、短期的な信用取引の手じまいを狙った取引きが行われるようになります。 日々の売り残高が増えているのにもかかわらず、株価が下がらないようなケースでは、その後、仕手筋による踏み上げによる急激な上昇を見込める可能性があります。 逆に、日々公表銘柄に指定されていない場合、直近の売り残高を確認することはできないため、このような買戻しによる踏み上げを狙うのは困難です。
規制措置が行われると、信用取引による購入金額が減少するため、株価は落ち着く傾向があります。 その後、株価の変動が落ち着いてくると、規制措置が解除されるため、再び株価の上昇を見込める可能性があります。 日々公表銘柄や規制措置の解除条件は前述の通りですが、価格の移動平均の乖離率の条件はどちらの解除でも同様です。 25日移動平均からの乖離率が 15% 以下の日が数日続いたときは、解除が近いと予測できます(解除のためには、信用取引量が減少する必要もあります)。
通常は規制措置がいきなり実施されることはなく、日々公表銘柄に指定された後、さらに取引が過剰になったときに規制措置が実施されます。 流れとしては以下のような感じです。
- 信用取引が増加 → 日々公表銘柄に指定
- 価格変動が激しくなる → 規制措置を実施
- 価格変動が緩やかになる → 規制措置を解除
- 信用取引が減少 → 日々公表銘柄を解除
信用取引に慣れた投資家は、この流れを意識した先回り売買を行うようになります。簡単に言うと、日々公表銘柄に指定された時点で、規制措置が行われる可能性を考慮し、ポジションをクローズします。そのため、日々公表銘柄に指定された銘柄の株価は上昇の勢いがなくなる傾向があります。