一般的に「円安」というと、米ドルとの比較で語られることが多いので、ここでも米ドルと円の関係に着目することにします。
円安になる要因
貿易収支が赤字になる
貿易収支が赤字になるということは、日本の輸入が増えるということです。 輸入が増えると、決済通貨であるドルも大量に必要になるため、円を売ってドルを買わなければなりません。 外貨準備として米ドルの保有量を増やそうとすると、ドルの価値が上がり、円安ドル高となります。
- 日本が貿易赤字 → 円安(輸入のためのドル買いが進むため)
- 日本が貿易黒字 → 円高(輸出で得たドルの売りが進むため)
ただし、長期的な視点(10年以上のスパン)で見ると、購買力平価によって通貨の強さが修正されていくため、各国のインフレ率の方が重要になってきます。 例えば、日本のインフレ率に比べて、アメリカのインフレ率の方が高いと、相対的に米ドルの価値がどんどん下がっていくということになるので、円高ドル安になります。
アメリカの金利が高い
日本の政策金利よりもアメリカの政策金利の方が高い場合、キャリートレードでドルを買う人が増えます。 FX をやっているとよく分かりますが、USD/JPY の買いスワップポイントがプラスになっているときにドルの買いポジションを持っていると、日々スワップポイント分のお金を受け取ることができます。 このような状況では、円を売ってドルを買う人が増えるため、円安ドル高が進みます。
アメリカの政策で米株が上がりそうな局面
アメリカの政策によって、アメリカ株だけが買われそうな局面では、円をドルに変えてアメリカ株を買う人が増えます。 相対的にドルの価値が上がるため、円安ドル高となります。
円とドルが共に強くなる要因
世界的に株価が下落局面
戦争やテロ、金融危機などが発生しそうなニュースが増えてくると、リスク・オフ資産である(とみなされている)日本円や米ドルが買われます。 日本円と米ドルは共に買われることになるのですが、2017 年現在では、日本円の方がリスク・オフ資産としての傾向が強いため、円高ドル安が進むようです。
ちなみに、リスク・オフの局面では、買われる(強い)通貨を順番に並べると下記のような感じになります。
- 日本円
- 米ドル
- ユーロ
- スイスフラン
- 英ポンド
- カナダドル
- ニュージーランドドル
- 豪ドル
ニュースなどでミサイルが発射される可能性が伝えられると、豪ドルやニュージーランドドルが売られ、日本円や米ドルが買われます。
円とドルが共に弱くなる要因
リスク・オン時
世界中が強気相場のときは、世界中の企業が投資家が対外的な投資を積極的に進めるようになります。 日本円や米ドルは資産として蓄えられている量が多いため、全通貨で相対的に見ると、日本円や米ドルを使って対外投資を行うことが多くなります。 結果的に、日本円と米ドルが売られ、共に通貨安が進みます。 リスク・オン時には、どちらかというと日本円の方がより多く売られるため、円安ドル高になる傾向があります。
為替の方程式
マーケットアナライズで紹介されていた、実践で使える為替の方程式です。 経常収支仮説、ポートフォリオリバランス理論は役に立たないとのこと。 結局は、「金利」と「インフレ率」に集約されると。
理論 | 政策・環境変化 | 為替の動き |
---|---|---|
金利平価説 | 金融引き締め | 通貨高 ↑ |
金融緩和 | 通貨安 ↓ | |
マンデル・フレミング理論 | 財政拡張 | 通貨高 ↑ |
財政縮小 | 通貨安 ↓ | |
購買力平価 | インフレ率上昇 | 通貨安 ↓ |
インフレ率低下 | 通貨高 ↑ |