アーンアウトディールの概要
買収リスクの高い M&A を行うときに、アーンアウトディール (Earn Out Deal) という形態で買収が行われることがあります。 これは、買収時にすべての買収費用を支払うのではなく、その事業の将来的な成果などによって追加報酬を支払うという契約で、ひとことで言うと 「買収費用の分割払い」 です。 アーンアウトというのは、買収後の追加代金の支払い義務のことです。
追加の支払いの有無や金額を決める、アーンアウトの評価期間は一般的には3年以内に設定されることがほとんどで、この期間に出した成果に応じて売り手側(幹部や株主)に買収対価が分割で支払われます。 企業の売り手側には、売却後もしばらくはその経営に携わって結果を出そうというインセンティブが働きます。
アーンアウトディールのメリット/デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
買い手 | 買収時に多額のキャッシュを用意する必要がなくなり、事業がうまくいかなかった場合の支払いを限定できる。 | 買い手側があまり経営に口を出すと、売り手側の経営のモチベーションが下がる可能性がある。 |
売り手 | 売却後に成果を出すことで多くのキャッシュを得ることができる可能性がある。 | (一括での売却と比べ)売却時に得られるキャッシュは少なくなる。売却後もしばらくは経営に関与する必要がある。 |
国内のアーンアウトディールの例
アーンアウトはアメリカで主流でしたが、日本国内でもアーンアウト条項を含む買収契約がちらほら行われています。
2018年4月6日のマネックスによるコインチェックの買収では、まずは36億円が支払われましたが、契約にはアーンアウト条項が含まれていました。 コインチェックが今後3年間で計上する利益の半分から訴訟費用などを差し引いたものを、追加の買収費用(報酬)として支払うというものです。
正式な契約書の文章ではありませんが、プレスリリース内の下記のような記述からアーンアウト条項がつけられていることが分かります。
上記に加えて、コインチェックの現所有者との間で条件付対価に関する合意がなされています。今後3事業年度の当期純利益の合計額の二分の一を上限とし、一定の事業上のリスクを控除して算出される金額が追加で発生する可能性があります。
仮想通貨 NEM の流出事件によって、コインチェックは今後 20 億円程度の訴訟費用がかかると試算されています。 アーンアウト条項によって、「この訴訟費用以上にちゃんと稼いでくださいね」と約束したことになります。 うまいやり方ですね。