まくまく投資ノート
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自称日本で唯一のカウボーイ税理士の安藤さんの著書。 中小企業の会計のコツをまとめた本ですね。 小さな会社で、大企業の会計と同じ考え方をするのは意味がないことがよく分かります。 個人事業を始めようと思っている人にも役に立ちそうな本です。

帳簿の話

  • 1番大事な帳簿は「売掛台帳」。火事になったら売掛台帳を持って逃げろ!
    • これはツケの記録であって、これを使って支払いの請求をしなければいけないため。
  • 2番目に大事なのは「仕訳帳」。総勘定元帳は仕訳帳さえあれば復元できる。仕訳長と総勘定元帳は主要簿と呼ばれる。
  • 中小企業の経理のおおまかな流れ(簿記一巡の流れ):
    1. 会計取引が発生したら 仕訳帳 に記入する
    2. 仕訳帳 から 総勘定元帳 に勘定科目ごとに分類して転記する(1年間繰り返す)
    3. 決算日に 総勘定元帳 から 試算表(各勘定残高の一覧)を作成する。(年1回)
      • これは総勘定元帳への天気が正しく行われているかを確認するため
    4. 総勘定元帳 から決算書(貸借対照表損益計算書)を作成する
  • 主要簿(仕訳帳や総勘定元帳)は複数あってはいけないが、決算書は複数あってもよい(企業会計原則)。
    • 税務署提出用の決算書
    • 銀行提出用の決算書
    • 取引先提出用の決算書
  • 勘定科目 はモノ自体で決まるのではなく、その費用を 何の目的で 使ったのかという性格で決まる。
  • 勘定科目は好きに作ってよく、どの勘定科目に入れるかはその人の自由。
    • ただし、いったん割り振りを決めたら、同じ勘定科目を使うこと。税務署は 前期比較 を行うので、極端に増減した勘定科目には敏感に反応する。
  • 雑費が多いと税務調査が入る ので、雑費に入れるくらいなら好きな勘定科目に入れてしまうのが良い。
    • 知人にお祝いの「花」を送った → 交際接待費
    • オフィスに飾るための「花」を買った → 消耗品費
  • 経営者は経営者視点に立てる人から買いたいと思っている。営業では 会計や節税の話 をプレゼンに混ぜるとうまくいく。
  • 「◯◯ということにして△△する」という考えに至ったら、それは節税ではなく脱税である。

資金の管理

  • 現金出納帳の残高と、金庫の中にある残高は毎日すり合わせる必要がある。だから、現金出納帳をアウトソーシングしてはいけない(できない)。そんなことをする中小企業が倒産している。
  • 利益とお金は別物である。企業が倒産する理由は、ほぼ100%が資金繰りにある。
  • 資金繰りのコツは、まずは 出ていくお金にターゲットを絞ること。資金繰りとは、お金が不足しないように見張ること。資金繰り表の一番左のカラムは「支出」にする。
  • お金を支出する前に、お金が入ってくるシステム が作れるなら資金繰り表は必要ない。
  • 倒産しない 2 割の企業は、資金繰りの必要ないシステムがあるか、資金繰りの管理をしっかりやっている企業。
  • キャッシュフロー計算書ではお金の流れは掴めない。 中小企業にとっては、キャッシュフロー計算書なんて意味がない。キャッシュフロー計算書と資金繰り表では、天と地ほどの違いがある。
    • キャッシュフロー計算書 … 過去のお金の流れ
    • 資金繰り表 … 今日以降のお金の流れ
  • 資金繰り表の作成を税理士さんに任せてはいけない。
    • 税理士が作るのは 資金繰り実績表 で、これはキャッシュフロー計算書と同様に、過去の資金の流れでしかない。
    • 明日以降のお金を管理するための 資金繰り予定表 を自分で作ることが重要。
  • 資金繰り表は、資金繰りの見通しがわかる程度のもので構わない。

計上タイミング

  • 民法の規定では、「動産の所有権が移転するのは、その動産を相手に引き渡したとき」となっている。お金をもらったときではない。
    • 不動産については、所有権移転登記の日。
  • 費用収益対応の原則
    • 商品を 10 個仕入れたとしても、売上が 8 個であれば、それに対応させる仕入れの費用も 8 個分になる。
    • 減価償却の考え方も費用収益対応の原則から来ている。
  • 3 パターンの減価償却
    • 定額法 … 毎年一定の額を費用にする
    • 定率法 … 初めの年ほど多い額を費用にする
    • 生産高比例法 … たくさん製品を作った年の費用を多くする
  • 会計の世界は曖昧だが、税法 では建物などの減価償却は定額法しか使えないことになっている。これは、税法の 課税の公平 というスタンスのため。新品の普通乗用車は、10 年乗るつもりでも耐用年数 6 年の定額法で費用計算しなければいけない。
  • ただし、所得税法および法人税法には 耐用年数の短縮 という例外規定が設けられており、真っ当な理由であれば耐用年数を短縮できる。例えば、自動車を酷使する事業の場合は、6 年ではなく 3 年で償却することも可能。

会社分析

  • 同業他社比較は役に立たない。 中小企業はみんなやっていることが違うし、会計基準に準拠した決算書を作っていないから。
  • 自社データの過去 5 年分を比較する という分析は価値がある。自社の過去の変遷や、今後の予測を立てることができる。
    • 5 年分の売上総利益率
    • 5 年分の販管費
  • 月ごとの売上の移動平均 をプロットすると、でこぼこがなくなって傾向を掴みやすい。
  • バランスシートの左側に「貸付金」がある場合は要注意。社長関係者に資金が流れている可能性がある。バレないように粉飾して、「未収入金」「仮払金」「有価証券」「繰延資産」という勘定科目にしていることもある。
  • バランスシートで、その企業の将来を占う
    • 心配性で大きく伸びなさそうな会社 … 銀行預金が多く、買掛金や未払い金が少ない。つまり投資に前向きではないということ。
    • 従業員を大切にしている会社 … 研修費などにちゃんとお金をかけている。保険料の比率が大きい。

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